名誉毀損の条件とは?

他人の名誉を傷つける行為を名誉毀損といいますが、名誉毀損は犯罪として刑事罰の対象になる他、不法行為として損害賠償の対象になります。

つまり、法律には刑事上の責任と、民事上の責任の2つが規定されています。

刑事上の責任については、刑法230条に規定されています。
民事上の責任については、民法710条に規定されています。

2つの判断基準は若干違いますが、他人の名誉を傷つけて社会的評価を低下させた場合に、対象になりうるという点では共通しています。

そして、名誉毀損が成立するかの最終的な判断を裁判所が決定する事も同じです。

実際には名誉毀損罪で刑事事件として取り扱われる件数は少なく、被害者が裁判所に申立てて民事事件として争う事例の方が多いようです。

ここでは、民事上の名誉毀損の成立要件とその責任について見ていきたいと思います。


民事事件としての名誉毀損


名誉毀損に関する法律は以下の民法710条です。

(財産以外の損害の賠償)
民法 第710条
他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。


上記条文が名誉毀損についての規定ですが、表現が抽象的すぎて、具体的にどの場合が名誉毀損に該当するのかわかりにくいかもしれません。


具体的には判例で名誉毀損の成立要件が以下のように示されています。

1.個人が特定される事
個人が特定される情報であれば、実名でなくても要件を満たします。
あだ名、イニシャルと一緒に住所や勤務先などをあわせて表示すると、簡単に誰の事を言っているのかわかると思います。

そのようにはっきりと実名を出さなくても、個人が特定される情報であれば、名誉毀損の要件の1つに該当します。


2.不特定多数の人達に知らせる事
よく「公然と」という言葉で表現されますが、大勢が集まっている場所で、情報を知らせると名誉毀損になる場合があります。

職場、学校、カフェ、講堂など現実の場所はもちろんですが、インターネットの掲示板など不特定多数の人が情報を知る事が出来る場所で、情報を知らしめると該当します。

最近ではSNSなどを使った誹謗・中傷が問題になってますが、このような行為も名誉毀損になる可能性があります。

LINEは不特定多数の人が閲覧する事を想定したアプリではないので、LINE上での誹謗中傷はこの要件に該当しません。


3.過失による行為
過失とは不注意で行った行為の事です。
わざとでなくても、不注意で情報を知らせると名誉毀損になる場合があります。


4.相手の社会的評価を下げる情報を知らしめる行為
事実かどうかは問題とされず、仮に本当の事でも、相手の社会的評価を下げる情報を知らしめた場合該当します。

重要なのは社会的評価を下げる情報を知らしめる行為かどうかであって、外部的名誉の侵害と呼ばれます。

社会一般的な常識に基づいて、あまり人に知られたくない情報であったり、周知の事実だったとしても、あえて不特定多数の人に情報を知らしめる行為は該当する可能性があります。


上記、全ての要件を満たしていれば名誉毀損が成立します。

しかし、名誉毀損には免責条件が別にあって、それらに該当している場合、名誉毀損には当たらないと考えられています。

名誉毀損については、公共の利害に関する事で公益に関わる目的で摘示された事実が真実であると信じる相当の理由がある場合、名誉毀損に該当しないとされています。

つまり、多くの人に影響を及ぼす公共性や公益性があって、事実と思われる相当の理由がある場合、社会的利益の観点から、名誉毀損にあたらないと言うことです。


名誉毀損の損害賠償について


名誉毀損が認められたら、救済手段として金銭賠償が基本です。
損害については物質的損害だけでなく、精神的損害も対象になります。


(名誉毀損における原状回復)
民法 第723条
他人の名誉を毀損した者に対しては、裁判所は、被害者の請求により、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができる。


名誉毀損によって受けた損害を回復するための、具体的な措置を請求する事が出来ます。
名誉毀損の性質上から謝罪広告の掲載などを請求する事が多いようです。

謝罪広告は被害者の名誉の回復になりますが、相手方の社会的評価を下げる効果もあります。
加害者が法人であれば、それだけで著しく社会的評価が下がるので、会社が倒産に追い込まれる事もあります。

あわせて物質的損害と精神的損害の賠償を請求する事が出来ます。

物質的損害は具体的に発生した損害額を請求する事が出来ます。

精神的損害は精神的に受けた苦痛を金銭賠償という形で請求する事が出来ます。
精神的損害に対する賠償を慰謝料といいます。

慰謝料の相場は100万円以下になる場合が多いようです。