令和時代の経営者像は?

日本は第二次世界大戦で、国土が焼け野原となり、何も無いところから戦後の復興が始まりました。

復興の最初の段階は、まず人々の生活の安定でした。
食べ物などの生活上欠かすことができない物資が不足した状況では、飢えて生きていく事ができません。

まずは生活物資を人々に届ける事が最優先課題でした。

そのような社会状況では、とにかく早く人々に物を届ける事が重要でした。
はじめは食料、そして消耗品・雑貨・家具などの生活必需品を製造して、商品の流通を整備していきました。

そしてある程度生活が安定してきたら、生活をより快適に出来る家電製品などを製造販売したら売れるようになりました。

このような昭和時代の流通を担うビジネスをする人達に求められるのは、早く行動出来る行動力だと思います。

誰よりも早く流通網を整備して、そこで主導権を握った人達が経営者として成功したと思います。

また、国土が焼け野原になって、家や建物などの建築物がほとんどなくなってしまったので、建設関係の仕事の需要が沢山ありました。

建造物を作れる土地がたくさんあったので、建築関係の技術がとても役に立ちました。
建設業を始めれば、沢山仕事があったので、会社を急速に大きくして事業を発展させる事も出来ました。

物がない時代なので、製造業も盛んになり、町工場などで様々な物を作って売ることも出来ました。
とにかく、早く商売を始めて沢山仕事をした人程、成功する確率が高かったのかもしれません。

なので戦後すぐにビジネスを始めた人の多くは、イケイケドンドンと突き進めるバイタリティーのある人達が多かったように思います。

もちろん全ての起業家がそうであったとは思いませんが、頭でっかちな人よりは、動けるタイプの経営者がより成功しているように思います。

昭和時代はそれがよかったのでしょう。
物がないから、物を作ればよく売れるし、建物がないから建物を作ればよく売れる、という時代でした。

細かい法律などは気にせず沢山働いた人が沢山稼ぐ時代でした。

しかし、今の時代、令和時代は物があふれています。
物を作ってもなかなか売れない時代です。

消費者の目も肥えてきて、商品をよく見て買うようになっています。
より安い商品を探して購入する人もたくさんいます。

デフレがなかなか解消しないのも、供給の方が需要よりも圧倒的に勝っているからだと思います。

より安く、より良い製品、より良いサービスへと消費者の意識は向いています。

このような物があふれた時代で求められるビジネス像とはなんでしょうか?

それは経営者像ともいえると思います。
もちろん、革新的なサービスや技術開発は絶対的に必要な事です。

良いサービス、良い製品を生み出した会社が売上を伸ばすのはいつの時代も同じだと思います。

なので売上を上げるために競争原理の中で、切磋琢磨して良い製品、良いサービスを生み出していく事はとても重要だと思います。

しかし、ここでは視点を法律上の観点に移して、労働者目線に立って、今の時代のビジネス像を考えてみました。

物があふれた時代は、目線を消費者だけでなく、労働者を含めた全ての国民に向けて広い視野で見る事が重要ではないかと思います。

働く人達は労働者であると同時に、物を購入する時は消費者になります。
消費者は、物を購入するために働いて労働者にもなります。

どちらも切り離せない存在で、ある意味同一視できる存在であるといえます。

労働者であると同時に、消費者である以上、労働者の目線を無視しては、これからはビジネスが出来ないのではないかと思います。

労働者はお金を稼いで消費者になるので、労働者がお金を稼げなくなったら、当然、消費は冷え込みます。

長期的視点に立つと、労働者は最終的には消費者になるからです。
消費が冷え込めば、経済成長が鈍くなるので、企業業績にも影響してきます。


民事上のリスクに備える重要性


コンプライアンスという言葉をよく耳にしますが、具体的にはどういう事でしょうか?

もちろん、法令遵守が意味として大きいのですが、その法律の解釈も時代によって変わってきます。

以前は大丈夫であった事も、今は認められない、という事もあります。
なので、単純に法律だけを守っていれば良い、というものではありません。

そして、経営者がよく意識する法令遵守という、言葉の中には罰則規定のある法律を守ることに意識が集中しているように思います。

確かに証券取引法・労働法・会社法・個人情報保護法など経済活動を規定する法律には罰則規定のある法律が多いので、これらの法律を守らないと、罰則を受けてしまって事業活動に大きな支障が出てしまいます。

なので、これらの法律を意識して法令遵守する事はけっして間違いではありません。
特に上場企業のような規模の大きい会社は法律をしっかり守って、罰則を受けない事がとても重要です。

しかし、罰則規定のない法律もたくさんあります。

特に民法には、罰則規定のない条文が多いです。
ビジネス活動は民間同士の活動なので、当然、民法の規制も受けます。

民法に違反しても、罰則がない場合、逮捕されることはないですが、相手方が裁判所に訴えたら訴訟に発展する場合があります。

裁判で負ければ、損害賠償金を払わなければいけないので、会社にとってもダメージになります。
また、裁判で負けたという印象がついてしまうと、企業イメージもよくないです。

ネットなどでブラック企業と名指しされてしまうこともあります。

民法を軽くみて、今までは大丈夫だったから、法律改正がない以上、今後も大丈夫だろうと思っていると、思わぬ時に足をすくわれるかもしれません。

民法の規制を受けるのは会社と消費者との関係だけでなく、会社とその会社で働く従業員との関係でも同じです。

また、会社と取引先との関係でも規制を受けます。

近年は個人事業主や、業務委託で仕事をする人が増えていますが、これらの人達は労働者ではないので、労働法の適用外ですが、民法の適用は受けます。

少し内向きな考え方かもしれませんが、従業員・取引先・委託先などに対して明らかに民法上の違法行為があれば、損害賠償の対象になるので、これらの人達に対しても法令遵守する事が重要になってきます。

そして民法の規定は抽象的な条文が多いので、時代によって解釈も変わってきます。
労働法の改正によって、従業員にたいする待遇の基準が変わってきたら、民法上の基準も変わってきます。

例えば、最低賃金が変更されれば、民法上の契約で仕事を請負う場合の、請負代金の相場も変わってきます。

なので、罰則規定がないからといって民法を軽く見ていると、知らないうちに法令違反をしている場合があります。

そして訴訟に発展する事もあるので、民法に違反しない事も重要になります。

このように、民事上のリスクに備えておくことが重要になってきます。
民法上の争いは当事者が不当な扱いを受けた事件を、裁判所に訴える事から始まります。

個人でも訴える事が出来るので、ちょっとした法律違反があった場合でも、訴訟に発展するリスクが常にあるのが悩ましいところです。

ここで重要なのは個人が不当な扱いを受けた、と感じるかどうかです。
なぜなら仮に違法行為があったとしても、個人が不当に扱われたと感じなければ、裁判所に訴える事はないからです。

訴訟になる時は、主観的な感情が原因となる場合がとても多いです。
なので、まずは、個人に対して不当な扱いをしない、という事が民事上のリスクに備える上で1番重要になります。

民法の条文は1000条くらいあります。
条文も抽象的で基準もあいまいな事が多いです。

なので民法の条文を全て覚えて違反しないように注意する事は現実的ではありません。
労働法であれば、条文を覚えて違反しないように注意していればよかったかもしれません。

民法の場合は、労働者・消費者・取引先・委託先など関わりを持つ全ての人達に不当な扱いをしないように意識してビジネスをする事が、最もシンプルで簡単なリスク管理になるかもしれません。

相手方が不当に感じなければ、訴え出る事はないので、訴訟になる事もありません。
法令遵守を意識するのであれば、このように広い視点にたって見ていくことがこれからの時代、必要ではないかと思います。

ビジネスにも攻めのビジネスと、守りのビジネスがあると思います。

攻めのビジネスは良いサービス、良い製品、斬新な発想などから新しい需要を作り出して売上を上げる事かもしれません。

攻めのビジネスには経営者の個性が発揮され、昭和時代にも必要だった行動力もその1つだと思います。

守りのビジネスはリスク管理だといえます。
特に、ライフワークバランスが重要視されている、今の時代では守りに入って事業を安定させる事も大切かもしれません。

そして、リスク管理は広い視点に立って見ていくことが重要です。
そのような意味で民事上のリスクに備えて、事業経営をしていく事が、これからの時代に求められる経営のあり方の1つかもしれません。