外国人雇用の現状と今後の展望は?

外国人雇用は、もともと今まであったホワイトカラー系の就労系の在留資格(技術・人文知識・国際業務、技能、企業内転勤など)と技能実習・特定技能などのブルーカラー系の就労系の在留資格の2つに大きく分かれます。

この2つには在留資格の取得要件や就労後の企業のサポート体制に大きく違いがあります。

ホワイトカラー系の就労系の在留資格で外国人を雇う場合は、学歴又は実務経験が必要になります。

例えば技術職で外国人を雇う場合、技術系の学科の大学を卒業していなければいけません。

この場合「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を取得して就労する事になりますが、在留資格の枠を超えた仕事に従事する事が出来ません。

技術職で雇っていたのに、単純作業などの業務を外国人に行わせた場合、不法就労となり罰則の対象になります。

この罰則は外国人本人だけでなく事業者側も対象になります。
このように外国人を雇う場合、日本人労働者を雇う場合以上に強い規制がかかります。

なぜ、そのような規制があるかというと、外国人を不当に雇って搾取する事を防止するためです。
外国人は一般的には弱い立場なので、搾取の対象になりやすいのです。

そのような搾取行為が蔓延してしまうと、社会的に大きな問題になりやすので、外国人を雇う場合、入り口の段階で強い規制をかけるのです。

違法な労働をさせないように、事業者側に強い罰則規定を設けることで、不法就労を防止するのです。


特定技能の在留資格が出来るまでは、いわゆるホワイトカラー系の職種に関しては、外国人の就労は許可されてきました。

学歴・実務経験等の条件を満たした外国人であれば、在留資格の範囲内で就労が出来ます。

しかし、近年様々な業界で人手不足が深刻になっています。
その影響で、このような業界を中心に外国人労働を認める動きが出てきました。

その1つとして特定技能の在留資格ができました。

特定技能の在留資格では職種を限定して、現場仕事に近い職種で外国人を雇う事が認められる事になりました。

例えば、

「介護」「ビルクリーニング」「製造業」「建設」「自動車整備」「宿泊」「外食業」「農業」「漁業」

といった職種で勤務する事が出来るようになりました。

そして勤務する条件も学歴や職務経験は必要なく、筆記試験に合格すれば、条件を満たします。

試験にパスさえすれば、これらの業種で外国人が就労する事が可能になったので、今まで以上に日本で就労する要件が緩和されました。

日本政府も外国人労働者の受入れ人数を示して積極的に外国人労働者の雇用を促進するように努めています。

しかし、実際には政府が示した受入れ人数に、到達していないのが現状です。
それは特定技能の在留資格で就労した外国人に対しては、それまでの、ホワイトカラー系の在留資格で就労した外国人よりも、厳しい規制をかけているためです。

例えば、特定技能で外国人を雇用する会社には一定の義務が課されています。
雇用契約に忠実なのはもちろんですが、日常生活で、雇用した外国人を支援する事が義務付けられています。

外国人が十分に理解出来る言語によって相談対応する事が義務付けられています。
また、生活オリエンテーションなどを行って外国人がストレスを感じる事なく日本で生活していける支援体制を作る事も必要とされています。

住居の確保など生活全般に関わることも支援の対象になります。

これら、職場だけでなく日常生活も支援する事が必要なので、雇用する会社側も相当負担が必要です。

なので、これらの負担に耐えれるだけの会社がそれほど無いのが現状です。
中小企業では、そこまで支援体制を整える事はとても大変なので、なかなか外国人を雇用出来ません。

そのような意味で、これから外国人雇用を促進させるには、このような生活全般を含めた外国人の支援体制をどのように構築してくのかが重要になってきます。


会社が義務を果たせない場合、罰則がある


このように特定技能の在留資格で外国人を雇う場合、様々な義務が会社側に課されます。

そしてその義務を果たせていない場合、会社側に罰則があります。
義務の内容によっては、出入国在留管理庁から指導、改善命令を受けることがあります。

もし、義務違反があると、今後数年間外国人を雇用出来なくなる場合があります。

義務の内容は細かな法律に規定されていて、全てを細かくチェックしていく必要があります。
特に労働法や出入国管理法に規定されている法令違反には、重い罰則があるので、これらの法律に無知であってはいけません。

外国人を雇う以上、法令遵守が鉄則だと思った方がよいでしょう。
どんなに小さな会社でも、労働法や出入国管理法に違反してしまうと、かなり大きなペナルティーを受ける事になるので、注意が必要です。


義務を果たせる会社は信頼される


しかし、逆の見方で考えると、このような義務をしっかり果たして、外国人を雇用出来る会社はとても優秀であるといえます。

労働法・出入国管理法に違反しないで、生活上の支援もしっかり出来る会社は労働環境が良いといえます。

そのような会社はたくさん外国人を雇って仕事をたくさん受注する事ができます。
人手不足の業界でも、事業を拡大して会社を成長させることが出来ます。

その意味から外国人を雇える環境が整っている会社はこれから成長していく事が期待出来ます。

また、労働者目線からいっても、良い労働環境で働ける会社は魅力的なので、自然と人が集まってくる可能性もあります。

社会的に信頼されて、労働環境が魅力的な会社はこれからの事業の成長に欠かせない事のように思えます。

今の時代に求められている会社はこのように労働者に一定の支持される会社かもしれません。
労働環境の悪い会社では誰も働きたいと思わないでしょう。

少しでも環境がよく、社会保障や福祉制度、また生活上の支援も受けられる会社でみんなが働きたいと思います。

これからの時代の、目指す会社のあり方の1つかもしれません。

外国人を受け入れることが日本人の労働環境の改善に役立つともいえます。
特定技能の在留資格で外国人をたくさん雇える会社は日本人にとっても労働環境が良いと思います。

労働法では外国人と日本人の待遇は同等でなければならないと規定されていますので、このように日本人の労働環境改善のために、外国人雇用を促進していくことが、これからの社会に求められていることのように思えます。